わすれて、わすれて 感想&ネタバレ
~~あらすじ~~
奪われる前に奪う。そんな荒廃した理不尽と暴力の世界で、両親と妹を強盗に殺された早撃ちとして国一番有名なリリィと、書いたことを忘れさせる不思議な本〈ダイアリー〉の持ち主カレン。カレンは〈ダイアリー〉を狙って自分の両親を殺した叔父とその仲間に復讐することを目的として、リリィと一緒に大型バイクに乗って、仇を探す旅に出る。
もう、本当にやるせないし、切ない話。
カレンは〈ダイアリー〉を使えば、復讐した人たちの記憶を消せるから復讐という連鎖
がつながることはない。って言ってるけどね、それが間違いだっていうのが最後に帰ってくる。すごい皮肉がきいている。
復讐の連鎖は断ち切れるっていうカレンは、〈ダイアリー〉を使われて自分の記憶を疑いリリィを疑い犯人に殺されてしまう。
リリィは、復讐に批判的だったけどカレンが殺されたことで、自分も復讐する側に回ったし。
何よりも善良で巻き込まれただけのアンネが殺されたのが、リリィとカレンの復讐の代償かな。
アンネは本当に生きててほしかった。
人は自分の大切な人たちのためなら(せいで)、どんな酷いこともできることがわかる話。
どんな悪人であったとしても自分にとっては大切で愛した人だったからというのが、復讐される側にも愛する家族や恋人、友人がいるんだよっていうのがわかる。
カレンにとって両親が本当に本当に大切だったから、奪われたから、奪い返す。
復讐をするのは、そっちのほうが気が済むから。という、言い分も理解できる。
「自分はかわいそうな被害者だから」「記憶をすべて忘れさせてしまえば許される」
この主張が虚勢というか、ちゃんと道徳(人を殺してはいけない)を分かっているふうに感じられる。わかっているから、ごまかすことしかできない。
でも、もう少し違う対処の仕方がなかったのかな。
それしかない。って突っ込んで視野が狭いのがまだ精神が発達していない少女らしいっちゃらしいけど。
根底にあるのは怒りだと思うんだよね。
怒りをどう昇華するのか、どうしたら両親を奪われた怒りを悲しみを絶望感を消せるのか。
ぐうぐると自分の中で煮詰めて、外に発散することをしなかったから、それだけで完結しちゃった。目的と手段が一緒になっちゃったパターンで、だから、復讐が終わったとき何をしたらいいのかわかっていなかったんじゃないかな。
リリィの根底にあるのは罪悪感だと思ってる。
自分だけ助かってしまった。家族を助けられる手段を持っていたのに。
ここからして、カレンとだいぶ違う。
リリィは犯人を捜して殺そうとしない。犯人を捜すという行為が自分が犯した罪を直視させる行為だから。彼女は今も傷を見つめることも直すこともできていない。流れ出る血を見て見ぬふりをし続けている。
でも、彼女はその傷を治すことができたと思うんだよね。カレンと復讐の旅に出なければ。
これから彼女がどう生きるのか、生きないのか、すごい気になるところ。