よだかの片想い 感想&ネタバレ
今回から自分なりに本のあらすじを紹介していきたいと思います。
~~あらすじ~~
生まれながら顔にあざを持つ前田アイコは、中学からの友人まりえに誘われて顔にあざや怪我のある人たちのルパルタージュに参加する。そしてなんと、その本の映画化が決定し、アイコは映画監督の飛坂逢太と対談することになってしまう。
この出会いが彼女の人生を変えた。
『よだかの片想い』島本理生|担当編集のテマエミソ新刊案内|集英社 WEB文芸 RENZABURO レンザブロー
もう本当に私の好きなタイプの本でした。
ドストライクです。
まず、主人公のアイコ。彼女は自分の境遇を可哀そうだとは思っていないんですよね。他人に言われてから、自分が「可哀そう」と言われる人間であるということに気づいてしまった。あの子はこうだからっていう無責任な言葉や勝手な決めつけばかりの中で一生懸命あがいてきたんだなということが分かる。悪意のない、同情からくる言葉こそが一番怖い。表面だけしか見ていなくて、何もわかっていないのに、わかったつもりでいる 人が一番厄介なのかなって。
そんな言葉に向き合って戦ってきたのがアイコ。
だから、彼女の周りには誠実な人が集まってくるのかな。いや、でも最初のまりえにはちょっとイラっとした(笑)
飛坂は悪意のある言葉と戦ってきた人。
自分の好きな人が中傷されて、反論したいのに誰にも聞いてもらえない。
だからこそちゃんと話を聞いてくれるアイコに惹かれたのでは。
「一緒にいるっていうのは、相手を肯定しながら、同じ場所にいること」
この言葉を飛坂の境遇と一緒に考えると、とてつもなく切ない。
この後に、だから自分には中傷の言葉に反論する責任がある。みたいなことを言うんですよ。ああ、そういうところが人に好かれるゆえんなんだろうなって。こういうことを言う人に会ったら、惚れちゃいますよ、そりゃあ。
自分の中で優先順位が決まっていて、そのことになると一直線になってしまう人。
だから、付き合っている人からは冷たいとか身勝手とか言われちゃうタイプの人間だなー。
誰もが違うコンプレックスを持っていて、そのコンプレックスと向き合って肯定して成長していくまでの過程を描いた作品だったと思います。
だれか一人でもありのままの自分を肯定してくれるのなら、それ以上に嬉しいことはない。けれど、ありのままの自分を見てほしい、ありのままの自分を受け入れてほしい、そう思うことは独りよがりで身勝手なものでもある。相手の気持ちだけじゃなくて、相手の環境(どう見られるのか)について推し量ることも付き合う上で大切なこと。
それを学んだアイコは強くて美しい女性に成長していくんだろうなと思います。
結局二人は本当の意味で結ばれることはなかったけれど、二人が出会ったからこそ成長することができたんだろうな。アイコも飛坂も。
もちろん、アイコや飛坂といった主要人物だけじゃなくてアイコのお母さんやお父さん、教授、ミュウ先輩、原田くんetc.
ほかの登場人物も抱えているものがあって、でもそれに向き合って生きているのが分かる。
本当にすてきな小説でした。